【水耕栽培】実験3 養液+LEDのみの供給で生育可能か?(前編)
■はじめに
この記事では、「養液」と「光」を与えた場合のリーフレタスの発芽・育成実験について記す。
「水道水」を与えた実験2では播種から4日目で成長がストップした。
実験2と同じ条件下において「水道水」を「養液」に変え、
実験2で植物の生長が止まった要因が栄養不足であるかどうかを確かめた。
■実験内容
以下の条件で計20個のリーフレタスをスポンジに播種後3週間様子を見た。
主な実験条件は以下・・・
温度:管理せず(室温20度前後)
湿度:管理せず(密閉空間での栽培)
二酸化炭素:管理せず
光:白色LEDライトを16時間/日当てた
■実験結果
・最短2日で発芽を確認
・播種後4日目以降も順調な成長を確認(写真1, 2参照)
・1割程度は発芽後目立った成長を見せず(写真2参照)
・2週間目には栽培ボックスが結露し、超高湿度環境での生育となった(写真3参照)
・3週間目には栽培ボックスの天井に葉が到達し、天井と密着した葉が白く変色(写真4参照)
・植物は光の強い方向へ伸びて成長した(光屈性という特性らしい)(写真5参照)
■考察・気づき
①4日目以降の成長について
ほとんどの苗は播種後4日目以降も順調な成長を見せた。
一方、1割弱の苗は発芽後成長せず、そのままであった。
今のところこれは個体差の範疇なのではないかと考えている。
②栽培環境の湿度について
今回の実験で使っている栽培ボックスは密閉されていて空気の入れ替えがないため、
蒸散された水分はそのままボックス内にとどまる。
また、養液も循環させているわけではなく、ボックスの底に貯まった状態になっている。
そのため、ボックス内の湿度は必然的に高くなる。
しかし、湿度が高い環境においても、少なくとも3週間の間は成長が見られた。
よって播種から3週間の間は湿度管理が必要であるとは限らないと思う。
もちろん、湿度によって蒸散量は変わり、植物の生長スピードに影響するので、
3週間目以降成長をするのには湿度管理が必須になることも考えられるし、
播種から3週間の間でも湿度管理をした方が大きな葉をつける可能性もある。
今後の実験で湿度を管理した状態での植物の生長スピードや葉の大きさを観察し、
今回の実験結果と比較しようと思う。
③葉が白色変色
栽培ボックスの天板にはアクリル板を用い、
アクリル板の上にLEDライトを直に置いていたため、
栽培ボックスの天板(特にLEDライトの設置部分)は高温となっていた。
成長しボックスの天板に密着した葉はその温度によって火傷を起こし、
白色に変色してしまったと考えられる。
成長後も壁や天井に葉が接触しない程度の十分な大きさの栽培棚にすることと、
天板の上にライトを置くのを避けることでこの問題は起こらないと考えられる。
④光屈性について
光の強い方向へ栽培ボックス中の全植物が密集することになるので、
他と比べて低い位置の葉に光が当たらなくなってしまったり、
葉が重なっってしまい窒息状態になってしまったりしてしまう。
また、茎が屈折するため売り物とする場合には不格好なものになってしまう。
こうした問題から、栽培棚を設計する際には、すべての苗にまんべんなく
光が照射されるよう工夫する必要がある。
考えられる工夫としては、以下の3つがあると考える。
ⅰ.ライトの高さを高くする
ⅱ.ライトを増やす
ⅲ.水によって光を分散させる
ⅳ.鏡面を利用し光を反射させる
ⅰはライトの高さを高くすることで、光の照射範囲を広げる。
この方法はコストがかからないが、面積当たりの光量は減ってしまう。
ⅱはライトを並列に増やし、光の照射面積を広げる。
この方法では面積当たりの光量を減らすことなく照射面積を広げることができるが、
初期コスト・ランニングコストがライト増設分増えることになる。
ⅲは水の入った水槽をライトと植物の間に挟むように設置することで、
光を分散させて、照射範囲を広げる。
この方法では初期コストもランニングコストもほぼがかからないが、
光を分散させる分、面積当たりの光量は少なくなってしまう。
また、少量ではあるが水が光を反射・吸収してしまう分、光量は減ると考えられる。
ⅳは栽培ボックスの天面・壁面を鏡面にすることであらゆる方向から光を反射し、
結果的に照射面積を増やすことができる。
鏡面を設置する初期コストはかかるが、ランニングコストはないため、ⅱ程のコスト負荷はない。
ただし、鏡面の形状が鍵なので要検討である。
■まとめ・感想
養液による栽培を始めて3週間で順調に育っていたが、一部の葉が枯れてしまったのが残念。
これ以上密閉されたボックスでの栽培は不可と判断し、
4週目以降はアクリルの天板を取り除いた以下のような状態で栽培を続ける。
この状態で栽培を続け、十分な大きさ(150gを想定)まで成長させられるか実験する。
湿度や二酸化炭素量などの環境について今までの実験との整合性を失ってしまうが、
この状態で植物の成長が見込めれば、それでよしとする。
そして、次は密閉したボックスの中で同じ環境を再現する開発に移行する。
なぜなら、私の実験の目的はレタスの生態を調査することではなく、
限られた密閉空間での水耕栽培技術を開発することだからである。
以上